【GIGAスクール】児童生徒のウェブフィルタリングについて(その2)
前回のコラムにおいて、「児童生徒がGIGAスクール端末のフィルタリングをなんとかして回避して、学習以外のことに利用している」と書きました。
これについてもう少し考えてみたいと思います。
この問題は、学校において「GIGAスクール端末は文房具の延長である」と捉えているため、「GIGAスクール端末を学習以外に使用することはよくない」つまり「制限すべき」という考えになるわけです。
制限がきつくてやりたいことができない!使いたいアプリがインストールできない!調べ物で見たかったサイトが規制されている!といった声はどの学校でもあがっています。
ただ、GIGAスクール端末は学校で、授業中に使うことがある都合上、児童生徒が授業中にゲームや動画を見て、先生の話を聞いていない、という事態を学校としては避けなくてはならないので仕方ないことかと思います。
児童生徒は、家に帰れば、ニンテンドースイッチやスマートフォン、もしかすると自分のパソコンやiPadなど、GIGAスクール端末以外でのICT機器(インターネットやゲームができる機器)があるでしょう。
令和4年度の全国学力学習状況調査によると、小学生のおよそ3割は、学校が終わったあと家でスマートフォンなどを使ってゲームや動画視聴を2時間以上やっていると回答しています。
この割合は中学生ではおよそ5割近くまで増えます。
つまり、GIGAスクール端末のフィルタリングをいくら制限しても、児童生徒の生活環境には、それ以外のテクノロジーがあふれているわけです。
ミシガン州立大学教授リンダ・ジャクソン博士が、12歳児を対象に行った研究では、普段テレビゲームをしている子の方がそうでない子より、創造力が高かったと言います。「現代のゲームにある複雑なキャラクターやストーリー設定は、子供の問題解決能力を高め、ゲーム以外の場に応用する力を促進する」と結論づけています。
反面、上記の調査結果のように学校の試験の結果は悪くなる傾向にあるため、学業という面では不振になる可能性があります。
GIGAスクール端末のフィルタリングは「授業で使う」ことから必要なことと思いますが、ICT機器等のテクノロジーを使った動画の視聴やゲームは一律悪いわけでなく、子供の想像力や空間認知力、反射能力が向上するということもあり、日本から世界に向けて新しいゲームクリエイターを創出するかもしれません。
現時点では、GIGAスクールが本格的に始まって2年程度ということもあり、児童生徒のデジタルシティズンシップもまだ浸透していないかもしれませんが、「ICT機器の善き使い手」を目指す教育を進めることで、こういった一方的な制限をせずとも正しくバランスをうまくとってICT機器を使うようになることが望ましい姿だと考えます。
執筆者紹介
佐藤 大輔 satow@affordance.co.jp
株式会社アフォーダンス
エデュケーションサービス事業本部 エバンジェリスト
主に教育機関向けのGoogle Workspace等のクラウドサービスを活用した授業改善にかかるアドバイスや、情報セキュリティにかかる教育・改善支援を実施。エデュケーションサービス事業のエバンジェリスト(伝道師)として学校のGIGAスクール構想推進や運営支援サービスを行う。学校の先生向けの学校著作権研修、保護者、児童生徒向けの情報モラル・デジタルシディズンシップ研修なども実施。