Loading...
News / ニュース

【GIGAスクール】学習eポータル標準モデルVer.3.00を読む。

2023.4.11

「学習eポータル標準モデル Ver.3.00」(ICT CONNECT 21より)の記載を読んでみて、学校現場、特に児童生徒と教員の方に関係する部分を確認していきます。

「3.5 学習eポータルをハブとしたデジタル学習環境のユースケース」が学習eポータルの利用者(児童生徒や教員)がどんなシーンでどういうように利用していくことになるか、書いている部分です。この中から私が気になる点を挙げてみます。

児童生徒がデジタル教科書を開くときにも、学習eポータルからシングルサインオンを行って、デジタル教科書サービスで再度ログインしなくてもよいようにする、ということですね。
これは当然できたほうがよいのですが、シングルサインオンをするために学習eポータルのアカウント情報とデジタル教科書側のアカウント情報を結び付けなくてはなりません。学習eポータルのアカウント操作にかかる権限は、基本的には教育委員会で持っているため、毎年、教育委員会にてアカウント設定の手間がかかるということになります。

児童生徒が転校した場合でも転校先でこれまでの学習ログを参照できる、ということです。
これはとても重要です。個別最適化された学びを行うためには自分のいままでの学習がしっかり残らなくてはなりません。転校するたびにリセットされていてはまるで意味がないので、学習eポータルのサービスの違いを超えて共有しなければならない情報です。

自分の興味関心を元にカスタマイズされた問題に取り組むことができる、という話ですが、実現可能性は低いのかなと思います。
例としてサッカーに興味があるならば、サッカーを題材に取り上げた問題が提示されるということが書かれていますが、これを実現するには膨大な問題が登録されていなければなりません。それこそGPT-4などのジェネレーティブAIで動的に問題を生成しなければ対応できないような気がします。

次は教員向けのユースケースです。

個別最適化された学習方法を児童生徒に指導する、ということですが、そうしたいのは山々・・・相当考えられたシステムになっていないと、先生が生徒一人ひとりに合わせて問題を出すというのは時間的に難しいと思います。このあたりはいかに自動化できるか、サービス提供者の腕の見せ所ですね。

進学・転校前の児童生徒の学習状況を確認できる、ということです。先に挙げたとおり、転校先でも学習ログが確認できなければ個別最適化した学びにはつながりませんので必須の機能です。

アカウントの年次更新の処理を、学習eポータル上の情報を更新するだけで他のシステムにも反映される、ということですが、これは現状の学習eポータルの仕様を確認すると相当厳しいです。なぜなら、学習eポータルの組織やクラス情報と、Google Workspace上の組織、ロイロノート上のクラス、スマイルネクストやeライブラリといったドリルアプリのクラスとはまったく違う構成になっていることが多いためです。
学習eポータルをベースにして他のサービスにアカウント情報を反映させるには、完全に学習eポータルの仕様に他サービスのアカウント管理の構造を合わせなくてはなりません。
そうすると他サービス側の使い勝手が悪くなり、活用できなくなります。
そういった点でここは見直しが必要な仕様だと思います。

ざっと目を通して気になったのは上記の点でした。
学習eポータルは、これから順次現場で本運用されていくと思います。
せっかく導入するものですから使い勝手のよい、真に効果の望めるものになって欲しいと願っています。

執筆者紹介


佐藤 大輔 satow@affordance.co.jp
株式会社アフォーダンス
エデュケーションサービス事業本部 エバンジェリスト
 
主に教育機関向けのGoogle Workspace等のクラウドサービスを活用した授業改善にかかるアドバイスや、情報セキュリティにかかる教育・改善支援を実施。エデュケーションサービス事業のエバンジェリスト(伝道師)として学校のGIGAスクール構想推進や運営支援サービスを行う。学校の先生向けの学校著作権研修、保護者、児童生徒向けの情報モラル・デジタルシディズンシップ研修なども実施。

Contact

お電話でのお問合わせ

011-596-9207 受付時間:平日 9:00 - 17:30

メールでのお問合わせ

MAIL FORM 受付時間:24時間